ハム子の置き土産

今晩は山本です。
三年前の事です。
家族でかわいがっていたハムスターが死にました。
ビールを指につけて鼻先に持っていくと喜んで舐めるのんべえで、私の晩酌の相手でした。
その週末のある晩、妻と子供たちは妻の実家へ行き、私は晩酌をして一人で寝ていました。
夢とうつつのはざまに入ったころ、奇妙な音が聞こえてきます。
闇の向こうにあるハムスターのケージからカラカラとかすかな音が聞こえるのです。
「疲れか飲み過ぎで耳がおかしいのだろう。」と考え、寝続けましたが、幻聴は収まるどころかますますひどくなります。
私は怖くなって亡きハムスターに呼びかけました。
「パメラ?お前、自分が死んだがを分かっちゃあせんがやないかえ?早う成仏しいや!」
しかし、己の死を受け入れられないのか、メタボだった生前には出したことがないような音を立てて回し車の回転速度は上がり続けます。
カラカラカラカラガーーーー!
私は布団をかぶり、その音に耐えましたが、「チュッ!」とハムスターが雄たけびを上げるに及び、もう我慢できず、電灯を点けました。
注視したケージの中には小さな若いハムスターが・・・してやられました。
にんまりとほくそ笑む家族の顔が浮かびました。

そのハムスターは安易に「ハム子」と名付けられ、チーズたら、ビーフジャーキー、アタリメといった一般的なハムスターなら味わえないような美食を与えられてすくすく育ち、家族に愛されていましたが三年半の天寿を全うし5月初旬、永遠の旅路に向かいました。
亡骸は、ハム子が寂しくならないようにウサギの置物のそばに埋葬してあげました。
それから2週間ほどたったある日、私たち家族は驚くような光景を目にします。
ハム子のお墓が、大好きなヒマワリの新芽にびっしりと覆われていたのです。
食いしん坊で、生前、よく頬袋にヒマワリの種を蓄えていましたが、どうやら食べきれないまま死んだようです。
死して尚人を驚かすとは天晴な奴でした。
このヒマワリは大切に育て、次に飼うハムスターのエサにしようと家族で決めました。
私も大した質と量ではありませんが今まで蓄えてきた知識や経験を次世代に伝える年が近づいてきました。
この仕事をしていて本当に良かったと思います。
折しも今、中学生達はテスト期間の真っ只中!
勉強を通してよいものを伝えられれば幸いです。
明日はテスト対策。
励ましたり、なだめたり、叱ったりと私の持てるすべてを使って知識と意識を伝えていきたいと思います。