ハメ

こんばんは山本です。
私の自宅は日高村の仁淀川沿いにあり、
通勤には自転車を使っています。
自宅近くの沿道には木々の間から光が差し、
川の青と見事に調和した風景が続きます。
散歩にうってつけの道で、親水公園から歩いてきたと思しき家族連れに時折出会います。

しかし、私が帰宅する頃には闇に閉ざされ、周りに人家も少なく、
頼れるのは自転車のライトのみです。
嵐の夜に通れば、私の頭の中で「魔王」が自動再生され、不気味さは増します。

2日前の真夜中のことです。
私は、自分の妄想から生まれた死霊や悪霊を振り切ろうと、全力でペダルをこいでいました。
すると前方の脇道を懐中電灯のほのかな明かりが下ってきます。
それは髪を振り乱した年配の女性でした。
夜の11時です。
イノシシやウサギに会うことはありますが、深夜にこんなところで人に会うのは初めてです。
たまげました。
私は挨拶をしてそのまま脇を通り過ぎようとしました。
すると女性は「ハメ!ハメいらんかえ!」とペットボトルの中に入ったマムシをこちらに突き出してきます。
2度たまげました。

愕然としている私をよそに、彼女が事の顛末を説明してくれました。
暑さのため寝られず、散歩をしていたら足に冷たいものが当たり、
何だろうと思って懐中電灯で照らしてみたらマムシだったというのです。
それを火箸でペットボトルの中に追い込み生け捕ったということでした。
それにしても何と言う手練れでしょう。

その後、半時間ほど身の上話や世間話をして別れました。
別れ際に再度「生きたハメの心臓は体にえいでえ。」と勧められましたが
丁重にお断りしました。
いろんなことがあるもんですねえ。