今晩は山本です。

開花した梅がゆっくり増えてきました。
今日は節分ですね。
私が子供の時分のことです。
どこの家でもそうですが父が鬼に扮していました。
鬼は家じゅう所狭しと暴れ、予測不能の動きと鬼気迫る演技で
幼い姉と私を恐怖の渦に巻き込みました。
当時、その鬼に扮した父よりも怖い鬼が近所におりました。
それは隣に住む左官職人のご老人でした。
ご老人といっても日々の労働で鍛え上げ、筋骨隆々とした人でした。
普段は寡黙で穏やかな人でしたがひとたびお酒が入ると手が付けられなくなるのです。
夕方、私がテレビを見てくつろいでいると
「重敏!重敏はおるかー!」
祖父の名を連呼する大音声が響き、突然障子が左右に放たれます。
恐る恐る見上げると一升瓶片手に赤鬼の形相をしたご老人が私の背後に仁王立ち・・・
なんてことが年に数回ありました。
不思議だったのは今にも暴れだしそうな赤鬼が祖父の部屋に入ると次第におとなしくなり、
小一時間もして帰るときにはつきものが落ちたような顔で帰っていくのでした。
後の事ですが、ご老人は戦地から帰還して人が変わったと聞きました。
ご老人には戦友の祖父にしか理解できない悲憤があったのかもしれません。
私は怒りと悲しみでゆがんだ顔のあの赤鬼を忘れられません。


