惜別

今晩は山本です。

結婚当初から使っている冷蔵庫の調子が今年に入ってから悪くなっていました。
たたいたり、ゆすったり、コンセントを抜いてみたり、励ましたり、懇願したり・・・
手を尽くしましたが回復せず、ついに猛暑厳しいこの夏力尽きました。
家電製品としては長い23年の生涯でした。
こんなに長く使っているとただの家電製品とは思えません。
山本家の食糧事情に精通し、苦楽を分かち合ってきた冷蔵庫です。
戦友のようなものでした。
給料日前、ドアを開け眉間にしわを寄せて食材をかき集める妻の姿を・・・・
臨時収入があり、用もないのにドアを開け鎮座する牛肉を眺めてにんまり笑う私の姿を・・・
こいつは台所の隅で見つめてきました。
カメノテに牡蠣、ナマズにスッポン、ギギといった
おおよその一般家庭では入れない食材が多かったと思います。
彼もどう冷やしてよいのやら随分戸惑ったことでしょう。
生きたツガニを入れて置いたら袋から脱走して、
妻や娘が楽しみにしていたケーキを台無しにしたこともありました。
今となっては冷蔵庫とのいい思い出です。

最後の日、妻が隅々まで拭いてあげました。
私は彼が最後にあたためてくれたビールを感謝を込めて飲み干し、
惜別の情にしばし浸りました。